

朔太郎くんの先生、玉藻です。

薬膳を作りたいっていう話をよく耳にしますが、何から説明をすれば良いのか分からないんですよね……。

中医学の食事には様々な特徴がありますからね。
少しずつ説明を重ねていくという形を取るしかありません。

そうですよねぇ……。
どこから解説を始めるのが良いんでしょう?


そうですね!
それに関連するところだと昇降浮沈(しょうこうふちん)、配伍(はいご)はどうでしょう?

そうですね。
素材選びの助けにもなりますし、良いと思いますよ。

それでは今日は昇降浮沈、配伍について解説しますよ!
この記事の概要

まずはこの記事の概要からご覧ください。
- 素材にはそれぞれ気が向かう4つの方向があり、昇降浮沈という
- 昇、浮は軽いもの、辛味、甘味を持つものに多い傾向
- 降、沈は重いもの、酸味、苦味、塩味を持つものに多い傾向
- 食材、中薬の組み合わせは7種類、配伍七情という
- 単行は1つだけの素材を使う方法
- 相須は同じ効果を持つものを組み合わせ、効能をより強くする方法
- 相使は一方を主、その他を主のサポート薬にする方法
- 相殺はある素材の持つ悪い効能を打ち消す方法
- 相畏はある素材の持つ悪い効能が打ち『消される』方法
- 相反は悪い組み合わせにより副作用が生まれる事
- 相悪は悪い組み合わせにより作用が軽減、消滅する事
それでは本題に入っていきましょう!
中医学の食事の特徴 昇降浮沈について

中医学では食材、中薬の持っている作用に方向があると考えています!
その方向を昇降浮沈(しょうこうふちん)の4つに分けているんです。
昇、浮は上へ向かう作用を持ち、降、沈は下へ向かう作用を持っている食薬、中薬です。
四気五味(味の持つ効能と属性)だけではなく、昇降浮沈の原則を覚えておくと素材選びがとても楽になります。
これから薬膳を作ってみたいと思っている人にとって、非常に大きな助けになってくれる考え方です。
では、具体的に昇降浮沈を1つずつ掘り下げてみていきましょう。
中医学の食事の特徴1 昇、浮
昇、浮は上昇、発散を意味しその効能は昇陽発表、去風散寒、湧吐(ゆうと)、開竅(かいきょう)とされています。
昇、浮の作用は陽気を出しやすくし、寒さを駆逐、毒物などを吐かせたり、目や耳などの穴を開かせ鋭敏な状態にする、という意味です。
五味の中で言えば辛味、甘味を持つものは昇、浮の効果を持っているものが多い傾向があります。
性質で言えば温熱性のものが昇、浮の効果を出しやすいです。

味、属性と同時にどの方向に作用するのかがざっくりと分かれば、必要な素材を見付けやすくなりますよ。
昇、浮の効果を持つものは花、葉のように軽い素材である事が多いですよ。
そこも目安にして素材選びの参考にしてください。
最後に食材例を載せておきます。
- ねぎ
- 菊花
- 薄荷
- 香菜
中医学の食事の特徴2 降、沈

降、沈は下へ向かう作用の事です!
降、沈はの効果は瀉下(しゃげ)、清熱、利尿、滲湿(じんしつ)、重鎮安神、降逆、収斂、止咳平喘(しがいへいぜい)等が含まれています。
排尿、排便を促し、熱を取り、精神を落ち着かせ、汗や咳を止める等の効能を持っているという事ですね。
五味で言えば酸味、苦味、塩味、属性で言えば寒涼性のものに降、沈の効果を持っているものが多いですよ。
降、沈の効果を持つものは素材としても重量感があるものが多く根、茎、実、石、貝類等が含まれやすいです。
参考までに食材例を載せておきます。
- 大根
- ごぼう
- 牡蠣(ぼれい)
- 石決明(アワビ、トコブシなどの貝殻を粉にしたもの)

昇降浮沈について何となくイメージ出来ましたか?
それでは四気五味、昇降浮沈と同時に重要な配伍について解説していきますよー!
中医学の食事は配伍が重要!

配伍(はいご)とは食材、中薬の組み合わせに関する決まりの事です。
中医学では配伍七情と言って、7つの組み合わせを使います。

中医学では食材、中薬を1つだけ使うケースが少ないです。
ハーブとの大きな違いでもあります。

配伍には5つの良い組み合わせ、2つのしてはいけない組み合わせがあります。
そのうちの1つは単行(たんこう)と言って、1種類だけの食材、中薬を使う方法です。
単行は組み合わせではありませんが、配伍七情の中に入っています。
良い組み合わせは相須(そうす)、相使(そうし)、相殺(そうさい)、相畏(そうい)の4つです。
悪い組み合わせは相反、相悪(そうお)の2つとなります。
では、1つずつ特徴を見ていきましょう。
中医学の食事の特徴4 相須(そうす)

同じ効能を使って効果を高めるのが相須

相須とは同じ効能を持つ食材、中薬を組み合わせる事で効能をより大きくする方法です!
例えば気を養う効果を持っている吉林人参と黄耆(おうぎ)を組み合わせる事で、その効果をより高める方法がよく使われます。
同じような意味合いでお米と山芋の組み合わせもありますよ。

ちなみに人参(中薬の方)と黄耆は合わせて人耆剤(じんぎざい)と呼ばれる補気効果が高い組み合わせとされています。
その他にも百合根と梨を同時に使う事で肺を潤す効果を強くする方法も相須です。
一方の食材、中薬を主とし、その他の食材、中薬が主をサポートするという組み合わせもあります。
それが相使です。
中医学の食事の特徴5 相使(そうし)

ある食材、中薬を主とし、その主たる食材、中薬をその他のものが補う、支えるという組み合わせを相使と言います。
気が虚弱な状態になる事で生まれるむくみを解消したい場合を考えてみましょう。
気を補う黄耆(おうぎ)を主とし、その利尿作用を強めるために冬瓜皮を使う事で黄耆の利尿作用をサポート出来ます。
この場合、黄耆が主となり冬瓜皮が補うものという相使の関係になっているんです。
それ以外にも生姜(辛温解表類)を主とし、黒砂糖(温裏類)を補として体を温める作用を強くする方法も相使ですね。

相使はある程度食材、中薬の効能について詳しくないと難しい組み合わせです。
無理に使おうと考える必要はありません。
中医学の食事の特徴6 相殺

相殺はある食材、中薬の悪い効果を、その他の食材、中薬で打ち消す組み合わせです。
例えば身近な例で言うとお刺身にワサビを合わせて使う方法が相殺の組み合わせです。
生魚の持っている毒を、ワサビが打ち消してくれる意味合いを持っています。
お刺身によく使われている大葉は体を温める効果を持っている食材です。
これは生魚の持っている体を冷やす効果を打ち消す意味合いがあります。
その他にも気を補う食材、中薬は気が滞る状態を生みやすいので、気を流してくれる食材、中薬と併せて使う事もあるんです。
この組み合わせも相殺ですね。
相殺の表裏関係にある組み合わせが相畏(そうい)になります。
中医学の食事の特徴7 相畏(そうい)

消すのが相殺、消されるのが相畏

相畏(そうい)とはある食材、中薬の持つ不良作用を、その他の食材、中薬が打ち消す組み合わせの事です。
相殺とは表裏関係にあります。

それって相殺と何が違うのか試験勉強中に悩みましたねぇ……。
さきほど紹介した相殺と相畏(そうい)の違いは分かり辛いので補足していきます。
例は先ほどのお刺身と大葉の組み合わせを使いましょう。
効果を殺すなら相殺、殺されるなら相畏という形で覚えておくと分かりやすいです。
組み合わせとしては同じものになりますが、どの効果を狙うのかによって表現が変わります。

効果を殺す=相殺、殺されるのを畏れる=相畏と覚えておこうね!

ここまでは良い組み合わせを確認してきました。
次は良くない組み合わせを見ていきましょう。
中医学の食事の特徴8 相反(そうはん)

2種類以上の食材、中薬を組み合わせる事で副作用が生まれるのを相反と言うよ!
柿とお茶を一緒に摂ると、それが便秘を起こすなどの例があります。
別々に摂るのなら問題はありませんが、組み合わさる事によって副作用が生まれてしまいます。
こうした組み合わせは日常生活の中でよく見られるものです。
しかし、素材の効能を勉強した後にはなるべく避けた方が良いでしょう。
中医学の食事の特徴8 相悪(そうお)

相悪(そうお)は2種類以上の食材、中薬を組み合わせる事で作用が軽減、消滅する関係を言います。
例えば日常的に使われるもので言うと大根が典型的です。
大根は気を下す作用がありますが、これに気を養う効果を持つ食材、中薬は相性が良くありません。
お互いの働きがぶつかり合ってしまい、作用が無効化されてしまうんです。
気を養うものは鶏肉、吉林人参、黄耆(おうぎ)、山芋などが挙げられます。
某有名レシピアプリを開いてみると、大根と鶏肉を組み合わせたレシピなどもたくさん掲載されていますね。
確かに百歩譲って味としては美味しいので普通の料理として食べる分には問題ないかもしれません。
しかし食養、食療、薬膳としてはしてはいけない組み合わせという事で理解してください。

食養、食療、薬膳の違いって分かる人少ないはずだよね!
最後にそこだけ補足しておくよ!
食養、食療、薬膳の違い

食養、食療、薬膳の違い
薬膳学では食養、食療、薬膳はそれぞれ異なるものだと理解されています。
まずその違いを見てみましょう。
- 食養=食材が使われる、健康な人のための健康増進用の献立
- 食療=食材が使われる、病人の為の献立
- 薬膳=食材、中薬が使われる、病人の為の治療、補助用の献立
健康な人には食養、病人には食療、薬膳が必要という違いがあります。
細かい違いではありますが、薬膳学を学んでいくと必ず出て来る違いですので、頭の片隅に置いておいてくださいね。
薬膳には中薬も素材として使われる点が特徴的です。
素材の効能などを細かく把握出来るようになると食養、食療、薬膳を使い分けられるでしょう。
まとめ

今回の記事をまとめていきますよー!
- 素材にはそれぞれ気が向かう昇降浮沈という4つの方向がある
- 昇、浮は軽いもの、辛味、甘味を持つものに多い傾向
- 降、沈は重いもの、酸味、苦味、塩味を持つものに多い傾向
- 食材、中薬の組み合わせは7種類、配伍七情という
- 単行は1つだけの素材を使う方法
- 相須は同じ効果を持つものを組み合わせ、効能をより強くする方法
- 相使は一方を主、その他を主のサポート薬にする方法
- 相殺はある素材の持つ悪い効能を打ち消す方法
- 相畏はある素材の持つ悪い効能が打ち『消される』方法
- 相反は悪い組み合わせにより副作用が生まれる事
- 相悪は悪い組み合わせにより作用が軽減、消滅する事

今回はよく解説出来ていて安心しました。

へへーん! 一応国際薬膳師なので!

知っているだけではなく、今回解説した事を使えなければいけませんよ。

ウッ……。
はい……。

今日の晩御飯は相須の主菜、相殺の副菜、相悪のスープでお願いしますね。

分かりました……。

最後までご覧くださり、ありがとうございました。
コメント